猪名川中学の学生から虫生の森の保全についての問い合わせがあり、3名で学校に出向き、対面で対話してきました。
保全についてお知らせする良い機会なので以下ご紹介します。
猪名川中学よりの問いかけと我々の見解
以下は、一つの答えで他の考え方もありえます。虫生の森を守るには守る我々も目的を失わずに多様性を持ち合わせることが大切です。
①虫生の森に絶滅危惧種などはいますか?また、いるとしたらどのように保護していますか?
→絶滅危惧種も生息していますし、虫生の森として大切にしている種(希少種)もあります。基本的な保護方法は、生息しているものの環境をできるだけ自然に近い状態で守ることです。対象種群が弱っている時は隔離や移植なども行います。
生き物
絶命危惧種: ヒキガエル、アカハライモリ、モリアオガエル、トノサマガエル
希少種: ゲンジボタル、オオケマイマイ
植物
絶命危惧種: エドヒガン、キンラン、オオヒキヨモギ、イチヤクソウ、スズムシバナ、ミヤマウズラ、
希少種: シロバナハンショウヅル、ササユリ、シロバナウンゼンツツジ、シュンラン
②虫生の森の方は、自然を守るために森周辺を整備していると聞きました。しかし、倒木を処理したりは中学生の私たちにはなかなか難しいのではないかと感じています。私たちでも環境保全のために出来ることはありますか?
→保全は環境を守ることなので、いろいろなことをしていますし、どなたでもできることはあります。倒木や枯れ木の処理は大切ですが、弱った貴重種の周りの植物を除去したり、陰にならないように周りの木の枝を切ったりするのは、どなたでもできますし、体験学習やトライやるウィークのお手伝いや啓蒙活動や会に来ていただけるだけでも保全のための大切な活動だと全員が認識しています。
③虫生の森で、現在直面している課題はありますか?
→会員の老齢化が第一の課題だと認識しています。最近、トナリエでの啓蒙活動やホームページなど若い方向けの情報発信などにより、新規会員の参加もあり光は見えていますが、継続した保全活動のためにはまだまだだと感じています。
第二の課題は、森の外部環境の変化です。保全地は市の天然記念物なので開発などの脅威はありませんが、周辺へのゴミの投棄や、イノシシの侵入、外来種の侵入などの脅威は常にあります。
④活動を続ける中で、どんなときに「環境が整ってきたな」と感じますか。
→一番判りやすいのは保全活動した貴重種が花を咲かせてくれた時などです。毎年継続して生育してくれているのは、うれしいもので、そういうのが環境が整っている状態だと認識しています。
⑤虫生の森の方が考える、「自然との共生」とはどのような状態でしょうか。
→人の活動と動植物の環境がバランスが採れている状態です。今は、鹿との共生はバランスが崩れていますし、熊もそうだと思います。虫生の森の保全の点からは動植物がバランスを採れるように保全人が助けることで共生することです。
以下追加質問
①どこまでなら自然に手を加えられますか。
→バランスを崩さないところまでが絶対的な限度です。
②どのような虫が自然に良い影響を与えてくれますか。
→自然の森は本来、それ自身の内部で循環して維持されるものです。そのシステムの中にいるものは全て環境の共生者として、互いに影響を及ぼします。そのこと自体が良い影響と言えますが、勝手に我々が決めることではなく、よく観察して本来の自然の摂理に身を任せられるようにすべきです。
③森林を伐採するとどのような影響が起こりますか。
→伐採した森林に生きたり利用するものだけではなく、水害など自然災害を誘発したりします。森林は高い生産性があり、生態系全体の生産性を脅かします。
④自然を守ることを後世へ引き継ぐためには、どういったことを意識していますか。
→周辺住民に向けた虫生の森の公開やイベント、特に子供や若い人に向けた活動はしっかりやりたいと思っています。先ず、自然に触れ合い感じ取る感性の醸成から自然環境への理解を深めるために、外部向けの活動を行っています。
⑤クマが人里に下りてこないようにするには、どうしたらよいですか。
→虫生の森はクマの問題からはまだ遠いと思いますが、人がやってきたことが現在のクマの問題の主たる原因になっています。緊急には里に出現するクマの駆除もやむを得ないと思いますが、全頭数管理の徹底や生息域と人里とのバッファーゾーンを整備するなど、お互いに共生できる方法を模索して継続することが肝要だと思います。